イマカエル
カエルが空を飛んでいた。私の頭から30センチほど高い所を、私が歩くのと同じくらいの速さで飛んでいた。大きさは大人の掌サイズほどだったと記憶している。
飛び出た目は笑っていて、とてものんびりと夜間の散歩を楽しんでいるかのようにみえた。
両手を広げたスタイルのカエルの腹は、鈍色に光っている。ぬれているのか、それとも乾いているのかが気になった私は、カエルに話しかけた。
「こんばんは。良い晩ですね」
「そうですね。今夜は絶好の・・日和です」
「えっ、なんですって」
ぎょろっとした目をこちらに向けると、カエルは少し歩みをゆるめたようだ。
「ですから・・日和ですよ」
カエルはわざと言葉を濁すかのようにもごもごと話している。
「そうですか。いや、あなたのおなかの色はとても素敵ですね」
「ありがとうございます。これは私のチャームポイントってやつなんですよ。先日もガールフレンドに誉められたばかりです。」
カエルは嬉しそうに口を開いたり閉じたりしながら、くるっと空中で一回転してみせた。言われなければオスのカエルだということはわからないだろう。
「まあその3日後には、彼女は他のオスガエルの背中のイボをほめていましたがね」
と今度は鼻息を荒くし、ジグザグに飛んで見せる。「これからどちらへ?」
私が聞くと、彼はニヤリと笑い早口で何か口走った。何を言っているのかはよく聞き取れない。それから空中で静止し、初めてカエルらしいジャンプをしながら少しずつ高いところへ登り始めた。
私はその場で立ち止まって様子を見ていたが、10分後には小さな点にしか見えなくなっていた。
まったく、よくわからない道草を食ってしまった。世の中にはおかしなカエルがいたものだ。カエル道を見失ったカエルかもしれない。
飛び出た目は笑っていて、とてものんびりと夜間の散歩を楽しんでいるかのようにみえた。
両手を広げたスタイルのカエルの腹は、鈍色に光っている。ぬれているのか、それとも乾いているのかが気になった私は、カエルに話しかけた。
「こんばんは。良い晩ですね」
「そうですね。今夜は絶好の・・日和です」
「えっ、なんですって」
ぎょろっとした目をこちらに向けると、カエルは少し歩みをゆるめたようだ。
「ですから・・日和ですよ」
カエルはわざと言葉を濁すかのようにもごもごと話している。
「そうですか。いや、あなたのおなかの色はとても素敵ですね」
「ありがとうございます。これは私のチャームポイントってやつなんですよ。先日もガールフレンドに誉められたばかりです。」
カエルは嬉しそうに口を開いたり閉じたりしながら、くるっと空中で一回転してみせた。言われなければオスのカエルだということはわからないだろう。
「まあその3日後には、彼女は他のオスガエルの背中のイボをほめていましたがね」
と今度は鼻息を荒くし、ジグザグに飛んで見せる。「これからどちらへ?」
私が聞くと、彼はニヤリと笑い早口で何か口走った。何を言っているのかはよく聞き取れない。それから空中で静止し、初めてカエルらしいジャンプをしながら少しずつ高いところへ登り始めた。
私はその場で立ち止まって様子を見ていたが、10分後には小さな点にしか見えなくなっていた。
まったく、よくわからない道草を食ってしまった。世の中にはおかしなカエルがいたものだ。カエル道を見失ったカエルかもしれない。
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2006/08/28 23:53 | トラックバック(-)
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